駐在・帯同で「自分がわからなくなった」と感じたら

夫や妻の駐在が決まり、仕事を辞めてついてきた。あるいは、自分が会社の辞令で海外に来た。最初の数か月は手続きや生活の立ち上げで慌ただしく過ぎていったのに、ある日ふと、「私はここで何をしているんだろう」「自分が誰なのか、よくわからなくなった」と感じる。
そんな感覚を抱えている方は、決して少なくありません。私は2017年からフランスで暮らし、四柱推命とタロットで500人以上の方の相談を受けてきましたが、海外在住の方の相談でも、この「自分がわからない」という揺らぎはよく出てくるテーマです。
この記事では、駐在や帯同で自分を見失ったように感じる理由を整理し、もう一度自分の軸を取り戻すための考え方をお伝えします。
帯同した方の約7割が、仕事を辞めて海外へ来ている
2025年に、駐在員とそのパートナーを支援する2つの団体(一般社団法人キャリアコネクトと株式会社ノヴィータ)が、駐在経験者とそのパートナー563人を対象にアンケートを行いました。それによると、駐在に同行したパートナーの約7割が、同行のために仕事を辞めていました。離職前は7割以上が正社員として働いていたといいます。
さらに、パートナーの約9割が、自分のキャリアについての不安や悩みを経験していました。不安の内容でもっとも多かったのは「就労再開」で約74%、次いで「社会とのつながりの喪失」と「キャリアの断絶」がそれぞれ約60%です。
これはあくまで一つの民間調査ですが、少なくとも、帯同した方の多くが「仕事」と「社会とのつながり」を同時に手放して海外に来ていることがわかります。自分がわからなくなるのは、気持ちが弱いからではなく、それだけ大きなものを一度に失っているからなのです。
「自分がわからない」の正体は、役割の喪失
日本にいたとき、私たちは知らず知らずのうちに、たくさんの役割に支えられています。会社での肩書き、職場で頼られるポジション、地元の友人の中でのキャラクター、日本語で冗談を言えば伝わる自分。
駐在や帯同で海外に来ると、こうした役割の多くが一度に消えます。新しく与えられるのは、「〇〇さんの奥さん(旦那さん)」「駐在員」「外国人」といった、自分で選んだわけではない役割です。
「何者か」を説明できなくなる苦しさ
人は、自分が何者なのかを、役割を通して確かめています。その役割が急になくなると、「自分には何もない」と感じてしまうことがあります。けれど実際には、なくなったのは役割であって、あなたそのものではありません。
駐在員本人にも起こる揺らぎ
この揺らぎは、帯同した方だけのものではありません。駐在員本人も、日本では当たり前に発揮できていた力が、言葉や文化の違いのせいで思うように出せない。現地スタッフと本社の板挟みになる。そうした中で、「自分の強みは何だったのか」がわからなくなることがあります。
海外生活の疲れ全般については、海外生活に疲れたと感じるのは、弱さではないで詳しく整理しています。
孤独感と「自分がわからない」はつながっている
外務省が2023年に行った海外在留邦人の孤独・孤立に関する調査(回答数約5万5千件)では、孤独を感じることがある人は合計44.9%でした。孤独感に影響した出来事としては、「言語上のもの」が31.6%、「文化的違いに起因するもの」が27.9%と多く挙がっています。
孤独と自分の揺らぎは、別々の問題に見えて、実は深くつながっています。人は、他人との関わりの中で「自分はこういう人間だ」と感じるものだからです。話し相手が減り、本音を言える場が少なくなると、自分の輪郭そのものがぼやけていきます。
もう一度「自分の軸」を取り戻すための4つのステップ
自分がわからなくなったときに、いきなり「本当の自分」を探そうとすると、かえって迷い込んでしまいます。小さなところから、順番に整えていくのがおすすめです。
- 失ったものを言葉にする。 仕事、肩書き、友人、日本語で話せる時間。何を手放したのかを書き出してみてください。失ったものがはっきりすると、ぼんやりした喪失感が「具体的な課題」に変わります。
- 役割ではなく「好きだったこと」を思い出す。 肩書きを外したとき、あなたが自然に夢中になれたことは何でしたか。人に教えること、整理すること、何かを作ること。その中に、場所が変わっても持ち運べるあなたの軸があります。
- 小さな「自分で選んだ役割」をつくる。 語学教室、ボランティア、オンラインでの仕事や学び。大きなことでなくてかまいません。人から与えられた役割ではなく、自分で選んだ役割が一つあるだけで、自分の輪郭が少しずつ戻ってきます。
- 期限を区切って考える。 駐在には多くの場合、数年という期限があります。「この数年をどんな時間にしたいか」を考えると、ただ耐える時間から、意味のある時間へと変わっていきます。
四柱推命で見る「あなたの気候」と「今の季節」
自分の軸を探すときに、四柱推命は一つの手がかりになります。
四柱推命では、生まれた年・月・日・時刻から命式を出し、その人の生まれ持った性質を読み解きます。私はこれを、その人の「気候」と呼んでいます。人と関わることで力が湧く人もいれば、一人で深く考える時間が欠かせない人もいる。表現することで満たされる人もいれば、誰かを支えることで力を発揮する人もいます。
役割を失ったときこそ、この「気候」を知る意味があります。肩書きがなくなっても、あなたの気候は変わらないからです。たとえば、命式の中で表現や発信を表す要素が強い方が、帯同先で誰とも深く話さない日々を続けていれば、満たされない感覚が強まるのは自然なことです。
また、およそ10年ごとに巡る「大運」は、人生の「季節」にあたります。今が新しいものを広げていく季節なのか、根を張り、内側を見つめ直す季節なのかによって、同じ海外生活でも感じ方は大きく変わります。大運については四柱推命の「大運」とはで詳しく解説しています。
タロットは、言葉にしにくい今の気持ちを映す「今の空模様」として使います。答えを出すためではなく、自分の本音に気づくための鏡です。
どれも、あなたがどう生きるべきかを決めるものではありません。決めるのはご本人です。四柱推命やタロットは、自分を理解し、選択を考えるための材料の一つだと考えてください。
専門家に相談してほしいとき
自分がわからない感覚に加えて、眠れない、食欲がない、何をしても気分が晴れないといった状態が2週間以上続いている場合は、一人で抱え込まず、医師やカウンセラーなどの専門家に相談してください。国によっては日本語で相談できる窓口もあり、お住まいの国の日本大使館・総領事館のウェブサイトで案内されていることがあります。占いは、こうした専門的なケアの代わりにはなりません。
よくある質問
帯同中に仕事をしていないことに、罪悪感があります。
働いていないことに罪悪感を覚える方はとても多いです。ただ、新しい国で生活を立ち上げ、家族を支えることは、それ自体が大きな仕事です。罪悪感を手がかりに、「本当は何をしたいのか」を考えてみると、次の一歩が見えやすくなります。
帰任や帰国の後、元の自分に戻れるか不安です。
帰国後にも、もう一度適応の時期があるといわれています。「元に戻る」というより、海外での経験を含めた「新しい自分」として再出発すると考えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。帰国するかどうか迷っている方は、帰国するか、残るか。迷い続けるときに見直したい「人生の周期」も参考にしてください。
まとめ
- 駐在に同行したパートナーの多くが、仕事と社会とのつながりを手放して海外に来ています。
- 「自分がわからない」の正体は、多くの場合、あなた自身ではなく「役割」の喪失です。
- 失ったものを言葉にし、好きだったことを思い出し、自分で選んだ役割を小さくつくることから始めましょう。
- 四柱推命で自分の「気候」と「今の季節」を知ることは、場所が変わっても揺らがない軸を見つける手がかりになります。

